自転車わだち-おっちょこちょいで、おせっかいな自転車屋さん-|秋吉清一郎さん

自転車わだち
秋吉清一郎さん

大阪府堺出身。父が戦前から自転車屋を堺で営んでおり、大学卒業後、父の自転車屋で働き始める。父が他界後、店を継ぎ数十年自転車屋を営んでいたが、産業構造の変化や時代の流れに逆らえず十数年前に店を閉じる。その後、昔から家族と共によく訪れていた安曇野に移住し、レンタサイクル店などを営んだのち池田町に移住。2018年5月に自転車わだちを池田町の町なかで開業。

自転車わだちを開業して

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安曇野・池田町に移住して来て農業したり知り合いの事業を手伝っていた1,2年前に、「自転車屋をやってみたら?」という話がきたんです。自転車屋が少なくなって、「池田町の若者~お年寄りまで、みんな困っているよ」って聞いて。

始めてから1月で半年ちょっと経ちますが、本当に反響がすごかったです。こんなに喜んでもらったのは、生まれて初めてかもしれない。僕がお礼しないといけないくらいに皆さんに利用してもらっています。これこそ「生きがい」だなと改めて感じました。自転車業の冥利につきます。

自転車の良さ

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やっぱり、自転車って生活の足なんですよね。自分の体一つで走れて、遠くまでいけるから健康にももちろんいいけど、自転車が生活の足だっていう人は思っている以上に多いですよね。

池田の町なかからスーパーマーケットへ買い物に行こうと思うと、歩いていくにはちょっと遠い。でも、バスもあまり走っていないし、タクシーはお金が結構かかる。そういう人にとって、自転車は生きていく上で欠かせないものなんですよね。

あと、私が大阪で自転車屋をしていたとき、世の中の家族はバラバラな状態になってきているって言われていたんです。でも、そんな時代だからこそ自転車は可能性を秘めているんです。はじめて自転車に乗るには大人の助けがいるし、みんなで出かけるときには走りながら自然と会話も生まれる。自転車って、自然と家族同士の関わりを生むんですわ。

池田のまちなかについて

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店にいると、たまに数十秒くらい町なかに人を見かけないときがあるんですよ。なんというか、「怖いな」「死んでいるな」って。町なかで子どもの声は聞かないし、このまま朽ちていくのかなって、ふと思うことがありますね。早急に手を打たんと、お化け屋敷みたいになってしまうんじゃないかな。

でも、逆に言えば僕も空き家を利用して店をやっているわけだから、町なかで、住民の生活と密に関わるような仕事をする人が一人でも二人でも、空き家とか利用して増えてほしいなって思うね。

新しいことをすると言うよりも、原点に戻って、人に喜んでもらうにはどうすればええんかなーって考えて仕事をする。

いい町だなー、また行ってみたいなー、帰ってきたいなーって思ってもらえることをする。とは言え、観光で人を呼んでくるには寂しい気もするからなぁ。どうしたらいいか、何も浮かばんなぁ…

新しいことを始める

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僕、性格がおっちょこちょいなんですよ(笑)大阪の人間はおっちょこちょいなんです。この辺ではあまり聞かんと思いますけど、気が軽いんです。関西の漫才みたいなもんですわ。でも、軽いからこそ時代の流れにもスッとのれるわけで、考えていたらいかんわけですよ。

あと、僕、おせっかいでもあるんです。困っている人がいたら、放っておけない。でも、長野県の人は、もしかしたらその辺りの感覚は大阪と比べると薄いのかもしれないですね。触らぬ神に祟りなしというか…

あと、僕には「解決しないものは無い」っていう信念があるんです。今は人の手には砕けんかもしれないけれど、環境や価値観が変われば、必ず自分たちが描く理想の時代は来るなっていう確信があるんです。ナポレオンが、「吾輩の辞書に不可能の文字はない」って言ったけど、あの言葉が僕の頭の中には入っているんです。俺にはそんなことできないのに(笑)

失敗しても、そんなもん頭下げとけばいいんですよ。大阪の言葉に、「軽い頭やから何度でも下げる」っていう言葉があって、間違いや失敗もあるけど、やらないで終わるより失敗してでも新しいことするのが人の道だと信じているんです。だから、自転車屋をこの歳で改めて始めて、お客さんに「ありがとうございます!」って言ってもらえるのは、本当に嬉しいんです。

でも、これは同時に、自分でやらないと得られない喜びなんだと思うんです。ドライバー使って、手を油だらけにして直さなかったら、この喜びは返ってこないわけです。

この店を始めるときに、友達に「君がやりかけたことは、生涯をかけてやり抜け」って発破かけられたんです。だから、死ぬときはドライバー持ちながら「あのおっさん、ドライバー持ちながら何しているんだろう?」って思われながらポッと死にたいですわ(笑)

自転車 わだち-CYCLE SHOP WADACHI-

長野県北安曇郡池田町池田4281-1

TEL:080-6936-1008

休店日:日曜日・祭日

この記事を書いた人

Maple Tree

2015年から長野県池田町でフリーペーパー『いけだいろ』を発刊する地域団体。構成メンバーは池田町在住もしくは出身の20代5名。2017年度長野県元気づくり大賞受賞。