只見線の上下分離方式による復旧・列車に足湯があるとれいゆつばさ|林幸男の乗り物見聞録 その3

とれいゆつばさ

このコーナーは、少子高齢化時代の地方、そして池田町が考えることを避けては通れない公共交通について、
大学院で公共交通の研究をするメイプルツリーメンバー林さんの視点と全国の事例から考える企画です。

とれいゆつばさ
林幸男

信州池田活性化プロジェクト「Maple Tree」副代表

新潟大学大学院 現代社会文化研究科 経済経営専攻

公共交通について研究している。

「第3回 只見線」

只見線は新潟県魚沼市の小出駅から福島県会津若松市の会津若松駅を結ぶJR東日本が運営する地方交通線である。沿線には田子倉ダムや「自然首都」を標榜する只見町などがある自然豊かな路線である。

しかし、2011年の7月の福島・新潟豪雨により川に架かる橋が流出し、只見~会津川口間が現在も不通となっており、当該区間は代行バスでの移動を強いられている。

かつては優等列車が運転されたが、沿線人口の減少により新潟県側の小出~只見では1日4往復の運転。不通時には只見線の廃止も避けられない状況まで追い込まれた。

2018年6月、不通区間の再開に向けて、工事が始まっている。復旧へと舵を切った背景には国・県・市町村・JR東日本がそれぞれ「上下分離方式」での復旧に合意したことが大きい。

「上下分離方式」とは列車の運行(上部分)はJRが引き続き担い、インフラの保有・管理(下部分)は地方自治体が行うことである。また同時期に改正鉄道軌道整備法が成立したこともあげられる。

従来ではできなかった鉄道路線の災害復興に対する黒字事業者への国の補助が可能となり、復旧に要する費用で沿線自治体との交渉がまとまったことが後押しとなった。

今後、復旧工事が本格化するだろう。次の段階は復旧した路線をどう生かしていくかである。関係する自治体・住民が地域に必要な路線との意識をもって、再生に力を入れていくことが必要である。私も全線再開の折には再度訪問したいと思う。

今乗りたい!列車たちⅢ 「とれいゆつばさ」(福島~新庄)

とれいゆつばさ

この列車はミニ新幹線用のE3系を改造し、列車の中に「足湯」を作ってしまったなんとも奇想天外なアイデアが人気を集めている。

「とれいゆ」とは「トレイン」とフランス語で太陽を意味する「ソレイユ」と「湯」の意味があるそうだ。

福島駅から奥羽本線を経由し、山形県に入る。県境の板谷峠は古くから難所として知られ、かつての奥羽本線は急勾配を克服するためにスイッチバックが存在するほどであった。途中の駅で立ち売りがあったという「峠の力餅」は今でも車内販売で購入することができ、かつての旅人の苦労が夢のあととばかりに軽快に峠を越える。

最初の停車駅、米沢は江戸時代に上杉氏の城下町として栄えた街。藩校の興譲館など教育が盛んな地でもある。もちろん米沢牛を使った駅弁もある。おいしい。

「とれいゆつばさ」は道中、湯にゆかりのある駅にいくつか停車する。高畠駅はなんとお風呂が併設されている。かみのやま温泉駅は高松・葉山などからなる上山温泉の最寄り駅、大石田駅は隣接する尾花沢市の銀山温泉の最寄り駅である。

終点の新庄駅からは折り返しの「とれいゆ」に乗っても良し、陸羽東線で鳴子温泉へ向かうコースやそのまま奥羽本線を北上し、湯沢・横手・大曲を訪ねるのもよい。


参考資料 河北新報オンライン「<JR只見線>復旧工事始まる 上下分離方式、21年度運行再開目指す」(2018年6月16日)https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201806/20180616_63005.html

この記事を書いた人

Maple Tree

2015年から長野県池田町でフリーペーパー『いけだいろ』を発刊する地域団体。構成メンバーは池田町在住もしくは出身の20代5名。2017年度長野県元気づくり大賞受賞。